地球の営みに合わせた「時間医学」という考え方

寺岡内科医院 寺岡院長202001
皆様、明けましておめでとうございます。
令和になって初めてのお正月です。お正月は晴れがましい行事がたくさんあって、日本の伝統文化に喜びを感じる季節でもあります。初詣はもうお済みでしょうか。

日々診療しておりますと、一年の短さを痛感します。まず大寒の頃からインフルエンザが本格的になり、少し温かくなると花粉症の季節です。すぐ受験シーズンの緊張感があり、4月からは新しい人たちを迎えます。7、8、9月は、お年寄りの脱水症、秋は咳のシーズン、11、12月はインフルエンザの予防注射で大忙し、というスケジュールをもう30年続けております。気温、気圧、日照時間、湿度などに影響されてでしょうけれど、病気と季節には大きな関係があることは疑いようがありません。すべての生命の営みは天体運行の影響を受けているようです。中でも地球の自転による影響は大きなものがあり、それらは1年とか24時間とかの周期として表れてくるのです。

たとえば芽が出る、花が咲く、実がなる、枯れるという1年周期の現象、朝に開花し葉が開き、夕暮れには花や葉がしぼむという24時間周期の現象は、多くの植物が持っているプログラムですが、植物には脳がありませんから考えてみれば本当に不思議です。

時間を刻む装置は各細胞の中にあるに違いありません。果たしてその時計はDNA上にありました。それは時計遺伝子と名付けられ、そのメカニズムは植物も動物もほとんど一緒だといいますから、生命が誕生したころからの重要な仕組みであることは疑いがありません。

動物の場合、組織分化が進んでいて、主な時計遺伝子は脳の視交叉上核細胞集団の中にあります。ここが一日のリズムを刻んでいるのです。動物にとっての使命は食い物を獲得し、栄養を身につけることですから、朝から始まる様々な環境変化に合わせて生きるために24時間時計が必須です。この時計の働きに従って朝に目覚め、交感神経を高めて日中は食料確保に出歩き、夜には副交感神経を高めてしっかり全身を休め栄養を身につけ、免疫力を高めて身体の補修をするという決まったプログラムが毎日繰り返されることになっています。そこで時間帯によって多い変化、病気というのが出てしまうことになります。

喘息発作が起きるのはたいてい明け方のころです。赤ちゃんが生まれるのもこの時間帯が多いのはお気づきでしょう。この時間は副交感神経の営みが終了し、活動的となる交感神経系が動き出し、自律神経の嵐ともいわれるように体内環境が激しく変化する時間帯なのです。嵐のあとには血圧、脈、血液の粘性が上がり、身体は活動的になるのですが、反面、この時間帯は狭心症、心筋梗塞、脳卒中が多くなります。こういった自律神経の働きを統合しているのが体内時計=時計遺伝子なのです。
 
驚くべきことに体内時計は自律神経ばかりでなく内分泌、神経系、免疫を統括する中枢であることがわかって来ました。動物実験で体内時計を壊すと、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドローム、骨粗鬆症、癌、早老症などが起こることがわかって来ましたからです。
 
人間ではこんな実験は出来ませんが体内時計を狂わせることは出来ます。というのは体内時計をリセットするのは朝の光(特に青の成分)だということがわかっていますので、夜中に強烈な青い光を浴びると、脳はリセットされて本来の24時間プログラムを狂わされてしまいます。夜勤の人に肥満、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドローム、発癌、骨粗鬆症が多くなることが指摘されていますが、体内時計が狂わされたことが影響していると考えられるようになりました。

もう一つ身体をリセットするきっかけがあります。それは朝食です。朝食によって消化器系の日内リズムが動き出すのです。そしてスムーズな消化液の分泌、蠕動運動、消化、吸収、インスリン分泌、多くの腸管ホルモンなどが協調して働くことができます。朝食はまるで消化器チームのスタートの号砲のようです。朝食の重要性はこれです。

朝起きて太陽を拝み、謹んで朝食をいただくことが健康の第一歩だということがガッテンしていただけましたでしょうか。初日の出を拝むことは一年の計の始まりにふさわしい習わしですね。あらためて思います。